無題



【匿名】

 平成七年一月は、五十一年間の人生の歯車が、一度に全部壊された様な時間を経験しました。昭和十九年生まれとはいえ、戦争、終戦の悲惨さは知るよしもなく、まさに地獄を見た思いです。長男は昨年巣立ち、次男も就職が決まり、娘一人だけになって、これから老後の設計にとりかかろうと考えていた矢先の出来事です。しかし苦しみは、昨年十二月頃より続いていました。 夫の発病、手術をして、まだ八日目で管も糸も抜けていません。そして、大地震、家屋全壊、二重三重苦でした。夫の病は軽快しましたが、家の事は、まだ何も解決していないのが現状です。「人生とはこんなものさ」と諦め、これまでの五十一年は切り捨て、あと何年生きられるかわかりませんが、まあ、あくせくしないで、遊びながら仕事をし、人生を楽しもうと思っています。その内なんとかなる、健康でさえあれば、まだ九年間は仕事が出来ると思い頑張っていきたい。

 

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阪神大震災報告 (c)1995医療法人平生会 宮本クリニック