無題
患者さんの体験記


【匿名】

 今年の一月十七日は、忘れる事の出来ない、今思い出しても本当に恐しい思いをしました。まさか私の生きている間に、こんな大きな地震が起きるとは夢にも思いませんでした。当日は、親と子供、又兄弟の安否を、一番に確認し、まだ続く余震に、怯えながら過ごしました。テレビのニュースで被災状況が、克明に伝えられ、大変な状況を知りました。
 外から聞こえてくる沢山のサイレンの音などで、本当に不安でした。又自分の目で状況を、確認するために外に出て見ました。建物は倒れ、傾き、道はさけ、遠方に暮れる思いでした。
 日に日に、風景が変わり、見覚えのある町の姿がなくなってしまいました。 心が重くなるのを感じます。近所に離れて暮している二人の娘達は、古い木造のアパートに住んでいましたが、まわりの多くの住宅が、倒壊しているのに娘の所は、半壊で怪我もなく無事で助かって幸いでした。私の所は水とガスが止まっただけで、被害はありませんでした。娘達も一ケ月ほど私の所で暮しました。命が助かっただけでも良かったと思っていましたが、ライフラインが止まってしまった不便さが、身にしみるようになりました。今までは、何の苦労もなく、使い放題だったものが断たれるということが、こんなにも精神的に苦痛になるとは想像もしていませんでした。去年の暮に、仙台で地震があった時、この地域でもいつか大きな地震が来たら、などと思ったことがありましたが、現実に起り大変おどろき、人ことではなくなりました。今回の地震で多くの方が、被災されましたが、全国のいろいろな地域の方や、団体の方々の、お世話になり、沢山のお心遣いをいただいて、本当に有難く思いました。私共のような病気をかかえる者にとって、交通 の手段が寸断され、通院に往復二時間歩くのはかなり大変でしたが、病院の先生や看護婦さん達、ご自身も被災されているのに、一生けん命治療にあたっていただいて、本当に有がたく感謝の気持ちで一杯です。被災された方の中には、ご家族や、家を失った方もおられ大変だと思います。いろんな問題を抱えこ苦労が続くと思いますが、元気を出してがんばってほしいと思います。又今後このような災害が日本だけでなく、世界中に起きないように、心からお祈りしたいと思います。

 

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阪神大震災報告 (c)1995医療法人平生会 宮本クリニック