無題



【匿名】

 いい時代に生まれて、良かったと思っていた。一応、普通 の生活ができ、身近な所では戦争もない。殺人事件などの、世間を騒がせている出来事も「怖いなー」と、思ってはいても、自分の身に起こるとは考えられない。阪神間では、大きな地震はおきない、と信じていたので、まさか、こんな大地震を体験するなどとは…。三ケ月が過ぎた今でも、夢では、と感じることがある。
 地震の時は、窓ぎわにあるベットの中で熟睡状態、ドーンと、大きな音と、揺れを感じながら、なぜか「ガラスが割れて、ベットの中に降ってくる。」と思い、ただエビのように丸くなって、布団をすっぽりとかぶり揺れの止まるのを待った。物がグチャグチャに散乱した室内をみてびっくり。外に出て、ガス臭さ、落ちた阪神高速、道路はボコボコの所もある。家がつぶれている等、みるもの全てにびっくり。何よりも、地震直後の街全体の静けさが無気味だった。
 大変なことが起こったと、その時は思ったが、本当に大変だったのは、それから後の日々だった。
 阪神大震災を体験した今でも、やっぱり私は今の時代に生まれて良かったと、思っている。街の復旧も進んでいる。顔を見たこともなかった同じマンションの人と助けあったり、挨拶をかわしたり、人のあたたかみを感じることが出来たから。

 

→目次へ戻る←

阪神大震災報告 (c)1995医療法人平生会 宮本クリニック