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2014年7月
【目的】
オンラインHDFにおいて必須タンパクであるアルブミン除去のコントロールは重要です。
ヘモダイアフィルターTDF-Hシリーズは、平均アルブミン除去量2g程度でありますが、患者さんによっては同じHDF条件でもアルブミン漏出量が大きく異なることが観察されました。アルブミンが漏出する条件を検証します。
【方法】
ヘモダイアフィルターは東レ社製TDF-Hシリーズ
前希釈オンラインHDF 置換液量:時間10Lに統一
除去特性とTMPを観察しました。(TMPとはフィルターの膜表面にかかる圧力のことです)
【結果】
アルブミン漏出量とTMPには、強い相関があり(図1)膜にかかる圧(TMP)が大きいほどアルブミン漏出量は多くなりました。
TMP上昇はアルブミン漏出を招くことが確認できます。
TMPの上昇の原因の1つに血液の濃縮が考えられます。
血液濃縮率とTMPには相関があり(図2)血液濃縮がTMP上昇を招く原因の1つであると解ります。
血管を流れる血液は透析中の除水によって濃縮していきます。
すると血管の外から水分は補給されます。そうすることにより血圧を維持しています。
しかし血管の外からの水分補給の速度は患者さん個々で違いがあります。
水分補給の速度が遅い患者さんの血液は濃縮しやすく粘性が上がりTMPは上昇しやすいようです。
オンラインHDFにおいて血液濃縮がアルブミン漏出の原因の一つであると考えられます。同じフィルター・同じ置換液量と、同じ条件でも患者さん個々の血液濃縮の度合によって除去効率は異なると推測できます。
【考察】
血管外からの水分補給の遅いことによる血液濃縮が TMP上昇・アルブミン漏出の原因の1つであると推測できます。
患者さん個々でアルブミンを除去したい患者さん・除去したくない患者さん・若い患者さん・高齢の患者さんと状況はさまざまです。目標とする除去効率も患者さん個々で違います。
ヘモダイアフィルターもたくさん種類があり、除去特性を把握しておくのは当然でありますが、一人一人の体質なども検討材料にして患者さんに合った条件設定をしていかなければならないと考えます。
2014年7月
先日行われました第59回日本透析医学会にて、昨年度当院で行った模擬停電を起こしての防災訓練の経験を発表して来ました。昨年度の防災訓練では、関西電機保安協会員立ち合いの元、実際に館内を停電状態とし自家発電装置を作動させ訓練を行いました。実際に非常灯の点灯場所や明るさ、非常電源による機器の動作状況など、通常業務や治療中には確認できない貴重な経験でした。
訓練結果及び対策としまして、全く非常灯の無い部屋がありました。これは建築基準法に満たない広さの部屋には設置されていなかった為で後に設置をしました。また非常灯点灯時の室内は薄暗く、緊急抜針など手元の作業がし難いとの意見があった為、懐中電灯に加え置き型LEDランタンを常備しました。その他、エレベーターは1階で扉が開いた状態で停止していたり、固定電話が使用できる事がわかりました。館内放送は使用出来ない事が分かったため、拡声器を各フロアに誘導灯とあわせて常備しました。
通常照明 非常照明
2014年7月
日々の透析をより安全に行うために、私たちは様々な事をしています。その中でも患者さまの体調の変化にいち早く気付いたり、察知し対処したりすることが大切であるといえます。
透析中の体調変化は、一定間隔で行われるバイタルチェック・患者さまの様子・訴えにより分かります。しかし、現状では限られたスタッフの数で患者さま一人一人を把握することが難しく、血圧低下などの急激な体調の変化が分からないのが現実です。状態の変化を察知するためには、連続的に患者さまを見守る事が必要であるといえ、体調の変化を検出可能なバイタルサインの連続モニタリングが切望され研究を行ってきました。
図1 ネックバンド型モニタリングデバイス 図2 装着例
今回、開発したモニタリングデバイス(図1)です。このデバイスには、光電脈波センサ・心電センサを埋め込んでいます。また頸部からの計測なので、患者さまに対して装着の意識をさせにくい事や拘束されないので自由に手足を動かしたり、座位になったりする事ができるといった特徴があります。 図3 計測波形 図4 PTTと最高血圧の関係
本研究では、比較しやすいように頸部と指先の同時計測を行い、加速度脈波(PPG’’)・心電図R波(ECG)を計測しました。またECGとPPGの間を脈波伝搬時間(PTT)と言います。(図3)
PTTと最高血圧との関係(図4)では、運動負荷により最高血圧が約150ありましたが、安静になることにより血圧が低下しています。それに応じて頸部と指先のPTTが延長している事がわかります。また、頸部のPTTは、指先に比べて顕著に変化していることがわかり(図4)血圧の曲線に対し頸部では-0.90 指先では−0.84と負の相関となりました。よって、頸部から血圧の推定は有用ではないかと考えます。
本研究では透析中の新たなバイタルサインの計測として、ネックバンド型計測デバイスの開発を行い首でのECG・PPG’’をリアルタイムに計測することで、PTTの計測も可能となり、PTTと血圧の関係により頸部での血圧推定の可能性が示唆されました。
これらの事から、さらに研究・開発していくことにより、患者の体調の変化を検出可能な無拘束モニタリング技術へと展開可能ではないかと考えます。
2013年11月
【背景】 腎臓は、尿を作るだけでなく骨や関節などに関連するカルシウム、リンなどの調節をする重要な役割を果たしています。その機能が低下する慢性腎臓病(Chronic
Kidney Disease:CKD)では、Ca(血清カルシウム)・P(血清リン)・PTH(副甲状腺ホルモン)のバランスが崩れることにより、骨や副甲状腺の異常だけではなく、血管の石灰化等を通して,生命予後に大きな影響を与えるとされています。二次性副甲状腺機能亢進症はCa、P,PTHのバランスが崩れることにより起こり、長期透析患者さんにおいて、高頻度に認められる重要な病態です。そこで、日本透析医学会は、2012年に生命予後を改善することを目標にして、目標指針を作りました。ここでは、生命予後を改善するために適切な目標値を定めており、透析前の採血結果で、おおまかに血清補正Ca濃度:8.4〜10.0mg/dl,血清P濃度:3.5〜6.0mg/dl,
i-PTH:60〜240pg/mlの範囲内をめざすように提唱しています。
二次性副甲状腺機能亢進症に対する治療として、経口活性型ビタミンD製剤に加え、オキサロール、ロカルトロールなどの静注活性型ビタミンD製剤が登場し、その後H20年に副甲状腺ホルモンを持続的に抑える薬であるレグパラが登場しました。
今回当院でH20年2月〜H25年2月までの5年間、合計23人の患者さんに従来の静注活性型ビタミンD製剤での治療に加えて、レグパラ内服を併用することで、上記の目標値を満たした人の割合をレグパラ併用前と併用後で比較しました。
【方法と対象】 従来のリン吸着薬 (炭カル錠、レナジェル) などの内服薬のみでの治療が困難で、オキサロールによる静注パルス療法を行っている二次性副甲状腺機能亢進症の患者さんに、レグパラの内服を併用し、上記で示した目標指針を満たした人の割合について検討しました。対象は、23人
(男性12人、女性11人)、平均年齢55.5±14.8 歳,平均透析歴13.6±9.0年,透析導入になった原因の病気が、糖尿病ではない方が20人、糖尿病の方が3人です。
尚、H21年にリン吸着薬としてホスレノールが登場したため23人のうちホスレノールの内服を6か月以上併用した16人に関しては、その効果についても検討しました。
【結果】 @血清i-PTH値はレグパラの併用開始前456±217pg/mlから5年後122±56pg/mlへと明らかに低下していました。A上記の目標指針をすべて (Ca値,P値,PTH値ともに) 満たしている人たちは、開始前9%から5年後50%に改善していました。Bホスレノールの併用後6か月で血清P値は併用前6.4±0.9mg/dl→半年後5.5±1.1 mg/dlに、Ca×P積は57±2.3→51±2.4と明らかに低下していました。
【結論】 これまでの内科的治療が困難な二次性副甲状腺機能亢進症の患者さんに対し、レグパラを併用することで日本透析医学会の診療ガイドラインの目標値に当てはまる人が増え、二次性副甲状腺機能亢進症の進行を遅らせる効果があると考えられました。
ホスレノールの内服を併用することで、更に血清リン値が低下する可能性があると思われました。
2013年11月
平成25年10月6日(日)兵庫県透析従事者研究会が神戸国際会議場であり、看護部門として一題、“透析通信支援システムへのスタッフの認識とIT化の推進への意識調査を行なって”というテーマで研究発表を行いました。
近年、当院では通院透析患者数が約240名に増加し、2010年11月新館を増設、ベット数を22床増床し計76床となりました。これを機に新型コンソール、及び透析通信システム(Future Net Web)を導入しました。体重を測定したら、直ぐに各コンソールに情報が転送されたり、情報がホストコンピューターに保存され便利な反面、手書きの情報の簡便さに比べまだまだ不便な事も多いのが現状です。
しかし、今後システムをさらに活用したり、電子カルテ、オーダーリングシステムの導入などIT化は進んでいくと思われます。
そこでスタッフ全員にアンケート調査を行い、IT化に対して現在の問題点と課題について把握し、今後のIT化促進への一歩としました。
上記の図は、発表で使用したものから、一部抜粋しました。
本研究を通して、見易く誰もが簡便に使えることがなにより求められているという結果が得られました。また業務を円滑に行うため、教育・業務改善をし、IT化は段階的に進めることが望ましいという結果を得ました。
医療現場におけるIT化は、スタッフにとっても乗り遅れないようにするのに必死となっているところです。最近では、コンピューターの方が賢くなって、ミスを防ぐシステムになっていたり、パソコンの苦手な人でも簡単に使いこなせるようになってきています。
ただ、パソコンや機械にばかり目がいって、患者さんの顔を見ていなかったり、声に耳を傾けないようでは本末転倒です。IT化で時間短縮できたところを、ケアーの時間の充実にあてられるよう努力していきたいと思います。
2013年11月
長期透析合併症の代表的なものの1つに『透析アミロイド症』があります。患者さんもよく耳にする言葉ではないでしょうか?
そこで、当院の透析アミロイド症の発症状況とアミロイドの原因物質であるβ2MG(ベーターツー・ミクログロブリン)のデータについて、当院の歴史と照らし合わせて調査しました。
まず、図1に当院での透析アミロイド対策に繋がるであろう事柄を時系列に示します。
1983年開院 1994年HDF保険適応 1996年リクセル発売。
1997年エンドトキシンカットフィルター(透析液中の細菌のカケラも通さないフィルター)を装着し、洗浄能力の高い過酢酸洗浄を取り入れ、同年ハイパフォーマンス膜(尿毒素がよく抜けるダイアライザー)であるポリスルホン膜の使用を開始。
1998年数人ではありますが、リクセル使用開始。
2004年オンラインHDF開始の為、RO装置を入れ替え、透析液溶解装置を購入、配管を全て新しくしました。
2008年オンラインHDF 中止。同年5型ダイアライザー(尿毒素が特によく抜けるダイアライザー)使用開始。2010年オンラインHDF 保険適応。同年当院では、新館をオープンし76床となりました。
2012年オンラインHDF 再開、患者数240名に対し220名がオンライン HDFを施行し現在に至ります。
図1 当院の歴史 図2 手根管症候群とばね指の手術件数
@透析アミロイド症の発症状況について
図2に透析アミロイド症である手根管症候群とばね指の手術件数を示します。
開院してから今年まで、当院で手根管症候群・ばね指の手術を受けた件数は127件でした。
2003年をピークに減少してはきていますが、手術件数0件とはなりません。
図3 アミロイド症を発症されている患者さんの導入年
図3に透析アミロイド症である手根管症候群とばね指の手術を受けた患者さんの導入年を示します。
図を見ると手術に至っている患者さんは1994年以前の導入で、1995年以降の導入の患者さんは、手術まで至っておらず、透析アミロイド症を発症していないことが分かります。
日本透析医会の統計調査では、透析歴15年で8.8% 20年で23.2%が手根管症候群手術の既往があるとなっており、1995年から今年で18年ですが、そのころから0件というのは注目すべき点ではないかと思います。
1990年代後半、透析は、透析液清浄化とハイパフォーマンス膜の使用が推進されました。
当院でも1997年からエンドトキシンカットフィルターを装着し、過酢酸洗浄を取り入れ、ハイパフォーマンス膜であるポリスルホン膜の使用を開始しました。1995年以降導入の患者さんが透析アミロイド症を発症していないのは、透析歴が浅いという条件があるとしても導入時期からのエンドトキシンカットフィルターによる透析液清浄化・ハイパフォーマンス膜の使用で透析アミロイド症の発症を予防・遅延できているのではないかと推測できます。
透析アミロイド症で苦しんでおられる患者さんに対しては、痛みの予防・軽減、再発の予防が重要であると考えます。未だ、透析アミロイド症を発症されていない患者さんに対してはできるだけ発症しない様、検証を重ね努力していきたいと思います。
Aアミロイドの原因物質であるβ2MGについて
図4 透析前 血清β2MGの推移
β2MGは、アミロイドの原因物質として知られていますが、透析前血清β2MGの値と透析アミロイド症の
発症に相関関係は無いといわれています。しかし近年β2MGは濃度を低下させる事で生命予後を改善できる予後関連因子であると報告されています。そしてβ2MGは透析液の清浄化により低下することが知られています。
図4に1995年からの推移を示します。1995年頃は平均34mg/Lと高値でしたが、1997年のカットフィルター装着の時期と2004年の配管を新しくした時期に有意な低下がみられました。β2MGの顕著な低下に
エンドトキシン対策が効果的であったと思われます。この15年程で平均値を10mg/L低下させることが
できました。透析液清浄化により予後関連因子であるβ2MGは低下させる事が可能であり、透析液清浄化の重要性を再確認できました。今後も透析液清浄化に努めていきたいと思います。